人生で大切な事を学んだ時間

学校での1日といえば、午前中に1日の授業の課題やプリントなんて全て終わってしまう。
お昼は校長先生と共に給食を食べ、日々色々な話をしてもらった。
小学生が、日々校長先生とご飯を食べるのだから、その経験はあまりにも貴重だった。

昼休みには事務室で事務員のおじさんおばさんとお茶をのみ世間話をする。
事務員のおじさん、おばさんの顔と名前は今でも鮮明に覚えている。
1つ感じたことは、教師と事務員さんでは立場がまるで違う。
事務員さんは僕に対して何の偏見もなく、とても親身に接してくれ、急須で入れた日本茶を飲みながら世間話をする。
「学校と言っても、立場としがらみで先生も大変なんですね。」
そんな会話を事務員のおばさんにしたのは覚えている。

午後はやることがなく、好きな本を読んで良いと言われ、毎日図書室から持ってきた本を読み漁る。
1日2冊、多い日は3,4冊は読んだだろうか。
人生で一番本を読んだ時かもしれない。
何を読んだかと問われると、思い出せるものは少ないが、確実にその後の人生に影響を与えたと思う。
決して勉強が出来たわけではないが、1日の授業分が、集中すれば午前中で終わってしまう。
学校の勉強って一体何なんだろう?
そんな疑問を抱いたのはこの時で、校長先生にもこの疑問をぶつけてみた。
「学校の授業を学ぶことはあなたの義務である。それが良いか悪いかは別として。」
「まずは義務をしっかりと果たしなさい。その上であなた自信が興味を持ったものについは、我慢せずとことん突き詰めなさい。」
「それがきっとあなたの進むべき未来を教えてくれるから。」

校長先生は基本的に、1日のスケジュールを全て僕自身に決めさせた。
勉強時間やその内容、また読む本についても自分で考えさせ紙に書き、それを見てアドバイスをするという形だった。
これにも異論は続出した。
「校長はあの子を甘やかし過ぎる」
「公立学校の義務教育に反する」
今聞けばおっしゃるとおりだ。
しかし、校長先生は僕を
「校長預かりの生徒」
ということで、それらを一喝し、最後までそれを通してくれた。
「義務教育が終われば、あなた達は社会に放り出されます。そこでは自分の人生は自分自身で決めないといけない。」
「あなたは自分で自分の進む道を決めることが出来る強い子なのだから、自分でやることは自分で決めなさい。」

小学校卒業から14年。
今でも鮮明に覚えている。
そして、遅咲きの僕は、14年もの月日を経てようやくその言葉の重みがわかってきたのかもしれない。

僕は人生の窮地で、素晴らしい教育者と出会うことが出来て本当に幸せだった。

心に誓ったあの日

卒業式の日、校長先生から卒業証書を渡された時、
「よく頑張った。君の人生はこれからだ!」
と言われ、
この方に恥じないような人生を送ろう
そう心に誓った。

今はもう70歳を超えると思うが、校長先生はお元気だろうか?
中学、高校と色々な先生方に出会ったが、小学校の校長先生との出会いが、僕の原点だと感じる。
今一度お会いしてお礼が言いたいな。

あれだけの批判に遭いながら、どうしてそこまでして、僕の立場に立ってくれたのか?
今だからこそ伺ってみたい。

僕の人生の原点は、ここなんだなって改めて感じた。
「僕と出会って話したことによって、小さいことだけどこんな変化があった」
そう言ってもらえることが、生きている上で何より嬉しい。

人が人を変えることはできない。
それは自分の人生経験からもよくわかる。
しかし、変化のキッカケを作ることはできる。
僕は伝えたい。
可能性に溢れているのに、自分の限界を自分で決めてしまっている子どもたちに、
「世界ってと~っても広くて、あなたが今見ている世界はそのほんの少しなんですよ。」

ということを。
あの時、小さな世界でうずくまっていた僕に、大きな世界とその可能性を教えてくれた校長先生のように。

「人生で大切なことは全て小学校の校長室で学んだ」より

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