ある若い看護婦さんが、幼い子供を持つお母さんが乳ガンで亡くなった場面に立会い、涙が止まらなくなり、その後仕事が全く手につかなくなってしまったんです。

「私は看護婦として、失格でしょうか」
と彼女は、私に聞きました。

私は「そのときに涙を流さない人は、看護婦になってはいけません。
その時に涙を流す心を持った人に、病人は看護してもらいたいのです」
と答えました。

ある東京の病院に、老婦人が入院していました。

既に、末期ガンでした。

死の一週間ほど前から、老婦人はしきりに天気予報を気にし始めました。

その理由を、総婦長が尋ねますと、「運動会があるからです」という返事でした。

老婦人には、小学校に入ったばかりの孫がいます。

つい先日、お母さんに連れられて見舞いに来て、学校のことをひとしきりしゃべっていきました。

運動会の練習がはじまったこと、かけっこが得意なこと、勉強はともかく、かけっこなら一番になれるかもしれないと自慢していました。

そして「おばあちゃん、雨は降らないよね」と、念を押して帰ったのです。

その話を聞くと、総婦長は八十人の看護婦さん全員に呼びかけました。

「おばあちゃんの願いが通じるよう、みんなでてるてる坊主をつくってあげよう。
病室を一杯にして、おばあちゃんの気持ちを叶えてもらおう」

看護婦さんたちは、さっそくひとり一個ずつてるてる坊主をつくって持ち寄り、ベットの上から窓の外まで一杯につるしました。

老婦人はうれしそうに、てるてる坊主たちを眺めていましたが、病状は日増しに悪化、かわいい孫の運動会の日を待ちきれずに、この世を去りました。

臨終の際、老婦人は看護婦さんたちの真心こもったプレゼントに「あ・り・が・と・う」というかのように、目でうなずきながら別れを告げたそうです。

西日本新聞社より

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